シェフ紹介

昭和22年東京生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、銀座三笠会館でフランス料理、南仏マノスク市オテルリ「ラ・フュスト」で南欧地中海料理、浅草ロシア料理店「マノス」等でロシア料理を学んだ後、練馬でキャベツロール専門店を7年営業。その後、蕎麦店を志し、山梨県長坂町「翁」、練馬「明月庵田中屋」で修行後、小田急生田で「手打ちそば生田」を11年余り営業、当地に移転。
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■東京農業大学教授・経済人類学者
元「料理の鉄人」審査員  栗本慎一郎
世界をいろいろ食べ歩いて、伊豆で不思議に美味いレストランを見つけた。この生田だ。まずシェフが不思議だ。早稲田で学んで、三笠会館でフランス料理を学んで、突然南仏地中海文化圏マノスクのオリルテに行く。帰国後、ロシア料理店を経て自分で店をはじめて開いたのがキャベツロールの店だという。これだけで十分変わっているのに、さらに蕎麦を修行して蕎麦屋開店、ついには食材の宝庫伊豆にたどりついた。その山崎のブイヤベースでの魚の身への火の通しかたは絶妙だ。身は崩れるか崩れないかの微妙さが命だが、これは私が好きな地中海料理(南欧料理は北仏パリ盆地のそれとは決定的に違う)の命である。キャベツロールの肉も煮込まれて柔らかくなおかつ崩れない。そこがシェフ山崎賢司が修行放浪で身につけた命綱だろう。それと蕎麦との関係はどうなのかという疑問が湧くだろう(私も湧いた)。蕎麦だけは火を通していないが(当たり前だ)、この味の切れは蕎麦粉とつなぎと打ちのバランスがやはり微妙な感覚として共通している。つまり蕎麦は煮ていないが、味の命は似ているのである(洒落分かります?)。実は地中海にもロシアにもまだ日本では食べられない最高の味がある。地中海はさらさらの天ぷら、ロシアではコンソメのごとく澄んでいてかつコクは最高のボルシチである。前者は旧サボイ王国王城のディナーで、後者はモスクワの革命前から伝統の貴族用レストランで何度も食した。いずれもいまだに日本のどこでも味わえない。生田で山崎がつくってもらうことが私のこれからの日本料理界への貢献のような気がする。